できることなら、あのイヌワシのように生きてみたいと思う。イヌワシのように生きる資格の一つとしては、おれはまず第一に決して群れないことをあげたい。周囲を見まわしてみるがいい。群れている人間ばかりが目につくじゃないか。カラス人間やスズメ人間ばかりじゃないか。ひとりでは呼吸もできない連中が、その必要もないのに、互いに軽蔑しあいながらいたるところに群れているじゃないか。 【丸山健二、まるやま・けんじ。日本の小説家、芥川賞作家。国立先代電波高等学校卒業後、東京で商社に入社。勤務の傍ら小説を書き始め、「夏の流れ」で文学界新人賞、芥川賞受賞。その後、谷崎純一郎賞、川端康成文学賞候補になるも、芥川賞受賞時の騒ぎが不快だったとすべて辞退。文壇と関わりを持たずに執筆活動を行った】
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